── 俺死んでるんじゃん

止められるわけがない。
物もつかめないのにありすがとまる訳がない。
大体……誰も俺が見えないから騒ぎにならないんじゃん……なんて事に気づきへたり込めばまた日が落ちる。

(ありすが死ぬってわかってんのに……俺、何も出来ないのかよ)

ありすのストーカーを見つけても、ありすを止めようとしても何も出来ない。
ありすが死ぬのを待つしか……出来ない。
振り上げられた鎌が降りるのを待つしかないのは馬鹿みたいに苦しいことで、ただただ啓一の顔は歪む。

葬式でありすが泣いた。

死神のいう死亡フラグが立った。
それに啓一は絶望した。

(俺が代わりに死ねるんなら……)

死んだ身だから言えるのかもしれない。
ありすの代わりに死んでやる……なんて普通だったら言えなかったかもしれない。
── でも。

「ありす、死ぬなよ……」

怨霊だとか幽霊だとかが人を呪えるならありすを殺そうなんてするやつを呪う力が欲しい。物理的にポルターガイストなんて出来る力が欲しい。……ありすの為に。

「横山サン」
「え?」
「アンタ、そんなに山本が好き?」
「えっと……」
「アンタに手紙出したっしょ?てか……アンタ泣き顔マジぶす。だから啓一の為なんかに泣くなよ」
「東金先生……でした、よね。先生がどういうつもりでおっしゃっているのかわかりませんが……あなたには関係ないです。啓ちゃんのことで泣いて何が悪いんですか?」
「『啓ちゃん』……ね。マジあんたむかつくわ。あんなのよりもずっとアンタのこと、好きだっていってんだろ」
「── っ!」