なんでか一生懸命探しているのにありすは見つからない。ありすのことが分かっていなかった自分に苛立っているうちに日が落ちる。

(タイムリミット── )

葬式に来るなら── と焦って啓一は家にとって帰った。
ありすが制服を着て俺の葬式に来るなら家に戻る。
そんでもって制服を着てから俺の葬式に行く。
なら── そこで止めればいい。
俺のために泣かないでいい。俺は別に文句なく死んでるし、俺は死神がちゃんとどっか死者の世界的なところにつれてってくれる。
だから大丈夫だって足止めすればいい。
必死で走っているのに意外と息も切れなくて……死んでいるってことを馬鹿みたいに実感しながら啓一はありすの家を目指した。

「── 行ってきます」
「啓ちゃんによろしくね」
「……うん」

涙目のありすが家を出る── そこになんとか啓一は間に合った。
制服のありすなんて見慣れているのになんでか苦しい。

「ありすっ!」

啓一がありすの名前を呼んだ。
精一杯の声でありすを呼んだのに、ありすはなんでか気づかない。

「待てよ、ありすっ!」

扉が自分に触れなかったのと同じ。
あったかい感覚は指先にあるのに……ありすは啓一の指からすり抜けた。

「ありすっ!行くなっ!」
「ありすっ!」
「ありすっ!頼むから!葬式なんて行くな」

声の限りに叫んでもありすは立ち止まらない。
ただ……真っ直ぐに真っ赤な目でどこかへと向かって歩いていた。