強く吹き付ける風が身体を揺らす。


街のネオンを見下ろせるマンションの屋上に私は立っていた。

きらきら。

きらきら。

色とりどりの光が闇夜を彩る。

夜は好き。

濃い闇が辺りを包み込んでしまうから静かで、人の姿も見えない。

世界に私ひとりみたい。




フェンスを乗り越えて、そのフェンスに背中を預ける。


不思議と何も思い浮かばない。

最期だから、いろいろ感情が出てくるんじゃないかと思ったのに。

心の中は穏やかというより「無」に近い。





トンとコンクリートを蹴って闇に身を投じた。



この世に未練なんてない。

それでも最期まで目を閉じなかったのはこの世界を少しは好きだったからなのだろうか。