「・・・・・そんな事が起きていたとは
存じ上げませんでした。」
和室で紅茶をすする
「黒崎様。さくらは何もこの事を知りません。」
「えっ・・・」
「10年前の事故で記憶が・・・」
うそだろ・・・
「じゃあ・・・僕のことも?」
「はい。」
「一生思い出せないんですか?」
「いえ。いつかは思い出す日が来ると思います。」
『でもいつの日になるか・・・』と苦しそうに
ため息を漏らす
「私は、知らないほうが幸せでいられるのじゃ
ないかなとたまに思う時があるんですよ・・・」
「でもっいつ思い出すか・・・!」
「怖いです。あの時のことはどうか思い出して欲しくない。
黒崎様。
お引取り願いませんか。」
「さくらは僕の婚約者です。これだけは一つも譲る気はありません。
たとえ僕の事を思い出せなくてもいいんです・・・
ただ、一緒にいられるだけでいい。。。
ダメですか?」
「一生、思い出さないかもしれないんですよ?」
「はい。」
「将来、婚約破棄になるかもしれませんよ?」
「いいんです。」
「しかたありませんね。」
一歩も譲る気がない俺に根負けしたのか
ある提案を出してきた。


