「あなた、大丈夫?」

優しそうなおばさんが僕を支えてくれた。

「あっちにいって少し落ち着きましょう?」

「待って…まだ言ってないんだ…」

やっとまともに言葉をしゃべれるようになった僕は、棺桶の前に立つ。

「?」

不思議そうな顔をするおばさんの前で僕は笑った。

「幸せを…ぼ…くに…くれて…ありがとう…」

つっかえつっかえだったけど、涙で声が裏返ったりしたけど、僕はちゃんとお礼をいったんだ。

隣でおばさんが泣いていた。




「すみません…ありがとうございました」

僕達は寺の外に出た。

線香の匂いが体に染み付いていて、まだ鼻の奥がツーンとしている。

「いいえ。」

おばさんは優しく笑った。

その優しい笑顔は鈴祢に少し似ていた。

「あなたお名前は?」

「森山淳です」

「鈴祢と仲良くしてくれていたのね?ありがとう」

「いえ、僕のほうが鈴祢に世話になったんです。鈴祢が僕を助けてくれた」

「あの鈴祢が?」

おばさんは驚いた顔をした。

僕は小さくうなずいた。

「そんな…。あんなに暗くて、気難しかった子が…」

僕は自分の耳を疑った。

鈴祢が暗くて、気難しい?

真逆だ。

僕の知っている鈴祢とは正反対な言葉だ。