「だよな…」
先輩は抱きしめた腕を離して言った。
つぶやいた小さな声から
あたしの胸に痛みが生まれる。
人を傷つけるのは心が痛むんだ、すごく。
それでも、
正しい選択をしたつもりでいた。
あたしはおそるおそる先輩の顔に視線を向けた。
すると既に先輩の瞳はあたしを静かに捉えていた。
先輩は
深く息を吸った。
「振られると思ってた…
予想してた
けど
正直、だいぶキツイな。」
ハハっと苦笑いを浮かべて
トゲの刺さった心をカモフラージュする先輩。
あたしのせいだ…
あたしがあんな簡単に無神経なこと口走らなきゃ
先輩が
こんなににつらそうな潤んだ瞳をあたしに向けることはなかったのに
先輩の表情が
胸が締め付けられるほどやり切れない切なさに溢れることはなかったのに
もっと慎重になるべきだった。
そしたら、こんな風に先輩を傷つけることもなかった。
たとえ避けられなかったとしても。
「ごめんなさい…」
精一杯の想いを込めたのに、
声がかすれてしまった。
そして、
なぜか先輩は
いつもの先輩へと戻ろうとしていた…。
冷たい瞳は
あたしのすべてを拒絶しようとする。
「謝られても、どうにもなんないから。俺の傷、ワザとえぐるのやめてくんない?」
怪しい笑みをこぼした先輩——…。

