でも
先輩離れてくださいとは言えなかったんだ。
なんとなく。
「なんか不思議な感覚だよ。どうして好きになったのか、その理由すらまともに分かってないのに。
想いは募ってく、この道が一方通行だって分かってるのにさ…。
苦しい、それだけじゃ言い表せないほどに。
俺、マヌケだよな…」
先輩の言葉が頭の中で何度も反響する。
「お前も苦しくなんの?アイツのこと、沖田啓って奴のこと考えるたび泣きたくなる?」
子供染みた質問だった。
まさか、
こんなことをスーパープレイボーイから聞かされる日が来るなんて、
思ってもなかった。
あたしはふうっと息を吐いて
余裕ぶって答えてみせた。
「もちろん。それが恋ってもんですよ。先輩が長年続けてきたベタな心理ゲームよりずっと難しいですよ。現実は…」
皮肉まじりに言った。
「そんなに難しいもん?もっとシンプルに考えらんねぇかな。
現実だろうがなんだろうが、答えは簡単だ。好きか嫌いか…。
それ以外ないだろ?」
「確かに、見せかけは複雑で現実は単純なのかもしれない、
だけど人って欲張りな生き物なわけで……」
上手く言葉が繋がらなかった。
知ったかぶりのあたしの恋愛観は先輩に見透かされた気がした。

