「えっ、あたし……?……あたしは……えっと…」
無表情で答えを待つ俺。
なかなか先に話が進まないなか俺は波羅に歩み寄って行く。
波羅を壁のほうに追い込む方向に一歩、一歩……確実に足を進める。
「嘘………下手だね。ほんとのこと言えば……?」
波羅が壁にピタリと体をくっつけたところで耳元に顔を寄せそう言い放った。
『フッ』って鼻で笑って余裕の笑みで語りかけた俺。
もちろんすぐにドンッと突き飛ばされたが……効果はあった。
波羅の頬は薄ピンクに淡く染まり、顔全体の表情は困惑を隠せていない。
なんで俺がこんなことするんだって思ったよな確実に……。
「ハァ………」
彼女は深く溜息をついて俺にいった。
「分かった、答える。啓にはたぶんかなわないだろうから……」
それから莉華が行き先を告げず帰ったことを聞かされた……。
俺は途中で口を挟んで「家に帰ったんじゃないか…?」といういかにもな正論を波羅にぶつけてみると、
「それは絶対にない……」と完全否定された……。

