そして私は弾き始めた。


ゆったりとした左手のアルペッジョと、流れるような右手のメロディーは、打ち寄せる波を思い起こさせる。

「「左は低音を響かせて。」」
「は…はい!」


少しずつ盛り上がって…

…ダァーン
「「ストップ!!そこはただ強く弾くだけではダメ!!ちょっとした大波をイメージして、力強く!!」」
「う〜…」
「「もう一度。」」


言われるまま、再度弾き始めた。

(大波、大波…)

ピアノは黙っている。

よし、ここはクリアか…

…ところが。

「「全っ然だめね。」」
「…え!?」

「「これじゃあまるで…嵐で大荒れの日本海ね。」」

はぁ〜!?