野崎は悠矢の着ている服をじょきじょきと切ってしまった。

悠矢の背中があらわになる。そこには悠矢の奇病の証である翼のような痣があった。

詩音は、それが以前見たときよりも大きくなっているような気がして気分が悪くなった。

「んーまた進み始めたな。まったくよぉ、なんなんだこれは。現れたと思ったら急速に成長して、ぴたっと止まったらまた成長を始める。なんか法則でも……」

野崎は悠矢の背中を至近距離でじいっと見つめながらぶつぶつと何かを呟いた。

「ん?」

ぴたっと野崎の独り言が止んだ。

そしてバッグから筒状のものを取り出すとそれを悠矢の背中に押し付けだ。

「わああああああ!!」

突然のことに驚いて悠矢が悲鳴をあげる。

「動くな」

野崎はそう言うと筒状のものの中を覗いた。

顕微鏡みたいなものなのかなと思って詩音は野崎に近づいた。

何が見えたんだろう。

野崎は詩音に気づくとそっと筒状のものを指差した。覗いてみろ、ということだろう。

詩音は野崎からそのままそれを受け取るとそれの中を覗いた。

「……。…………!!」

野崎の言わんとすることに気がついて詩音は絶句した。

この痣は、翼みたい、じゃなくて、本当に翼だった。

細かい羽の模様がびっしりと悠矢の背中の痣についている。

まるで、神様が用意したような、そんな神秘的でだけど恐ろしい羽が。