「キスしたくなった?」
と、今のわたしにしてみたらとんでもないことを言い放った。
「してもいいけど、ほら」
そう言ってわたしに顔を近づける。
わたしが風邪で寝込んだときと同じくらいに、十夜の顔が近い。
「そ、そんな風に言われたら希少価値なくなる。したいものもしたくなくなる」
誤魔化すようにそう言った。
我ながらうまい台詞を考え付いたものだと、ほっと胸を撫で下ろした。
すると、今度は十夜がその薄茶の瞳を細めてわたしを見つめる。
「俺がシたいんだけど」
十夜の顔を見て、心臓がとまりそうになる。
いつもの様な明るさは、その表情には皆無だった。

