「ね?」
同意を求める様に言ったのに、返ってきた言葉はわたしの予想したものではなかった。
十夜の表情からも、声音からも、変化は全く見受けられない。
けれど、
「なあ、それ誰と比べて言ってんの」
その言葉は普段十夜から出るような言葉ではなかった。
ドキンと、心臓が高鳴る。
言いようのない不安や焦燥感が湧き出てくる。十夜と一緒にいて、こんな気持ちが生まれたのは初めてのことで、なんだか怖い。
十夜の隣にいる時、わたしはいつも心地よかった。
ドキドキすることも、不安になることも、何も無い。
他の男との間に辛い事があっても、ここに帰ってくれば自然と癒されてしまう。
一緒にいることが、まるで空気のように当たり前になっていた。
なのに今になって、どうしてこんなにも感情が乱されるんだろう。

