気まぐれ社長の犬


う、嘘でしょ…
私動物苦手なのに…


2匹は目をぎらぎらさせながらこちらを見つめ唸っている。


〈殺される〉そう思った。



「行け」



その言葉を合図に2匹は私達に襲いかかってくる。



「きゃああっ」



私と響城さんはギリギリで避ける。



「妃和!?」



私の様子がおかしい事に気づいた響城さんが離れた所から叫ぶ。



「ひび…きさん…」



私の手が小さく震える。

2匹は振り返り虎の方が私に向かって走り出して来る。



「や…いや…」



恐怖のあまりぺたんっと座り込んでしまった私。


足が、動かない。
このままじゃ…食い殺される。



「響城さん…助けて…!」



虎が飛びかかった瞬間、銃声が2発響いた。



「当たり前だろ。お前もたまには可愛いこと言えんじゃん」


「響城さん…!」



目の前には足を撃たれて倒れている虎が私を睨み付けていた。



「ほら、立てよ」



響城さんに手を引かれ、私は立ち上がった。



「あ、ありがとうございます」


「悪い、動物苦手なの忘れてた」


「いえ…本当にすみません」



私が頭を下げると響城さんは私の頭をくしゃくしゃっと撫でる。



「謝んなよ。そりゃ人間苦手なもんぐらいあんだろ。むしろお前はもっと俺を頼れ。分かったな?」



そう言って笑う響城さんに胸が高鳴る。