「響城さん待ってください!!」



呼び止めても響城さんは無視して車に乗り込む。



「ちょっと何なんですか!?無視しないでください!!」


「あ"?うっせえな」



響城さんは不機嫌そうに窓を見つめる。



「面倒くさい方ですね。もしかして嫉妬でもしたんですか?」


「自惚れんな。あんなことで嫉妬なんてするわけねーだろばか」


「そうですか…婚約者に嫉妬させてしまうなんてすみません」


「だから違うって!!」


「許していただけますか?」



私は響城さんの手を握って上目遣いでそう言った。



「っ!!…お前はいっつもずるいんだよ」


「それが女というものです」


「はっ世の中の女全てがお前みたいなやつじゃないことを祈るよ」


「もしそうだとしても…不運なことに私を選んでしまった響城さんには関係ないことですけどね」


「言うじゃねえか。それよりお前、携帯見てみろ」


「え?」



私は鞄から携帯を出して電源をつけた。


“不在着信23件”



「うわっ!!」


「ばかなことしやがって…奏希がどんだけ奏女のこと心配してたか」


「すみません……」


「でもまあよくやったよ。意外と行動力あるんだな。少しはお前のこと見なおした」



そう言って笑顔を見せる響城さんに、心臓が早くなる。



「…ありがとうございます」



その笑顔の方がずるいと思う……

自分から繋いだはずの手が、なんとなく恥ずかしくなってくる。



「到着いたしました」


「ありがとう」



響城さんは扉から出ようとする。

繋いだ手が、離れそうになる。


私はなんとなく離したくなくて、ちょっと無理やり同じ扉から出た。



「何であっちから出ないんだ?」


「なんとなく、です。行きましょう?」



私は繋いだ手をもう一度握り直し、歩き出した。