「なんでそんな気をつかうのよ!!少しぐらいわがまま言えばいいじゃない…それで本当に後悔しないの!?」
「仲間に迷惑かける方が絶対後悔する!!」
真剣な目でそう言った奏女ちゃんは強くて…もうなにも言えなかった。
その時、鞄の中の携帯が震えた。
開くと<風間響希>の文字。
もう私がしたってばれたんだ……
携帯のGPSで場所がばれると困るし今は電話に出る気なんかないから電源を切った。
今帰るわけにはいかないんだ……
確かに奏女ちゃんの考えは仲間思いで立派かもしれない。
でも私が納得できない!!
だってその背中に背負ったラケットは、テニスがしたくて持ってきたんでしょ?
ただの飾りじゃ…ないんでしょ?
なら1度でいいからしようよ。
「奏女ちゃん、ラケット2本持ってる?」
「一応あるけど…なんで?」
「テニスしよう今から。私が相手してあげる」
「は!?あんた何言ってんの!?さすがにもう帰らなきゃやばいしこのコートももう使用できないよ」
「別に怒られるには変わりないんだから、なら十分楽しんでから帰ろうよ。じゃないと釣り合わないじゃない。コートならなんとかするから」
私はそう言って奏女ちゃんから離れ、このコートの持ち主らしき男に話しかけた。
「すみません今から少しだけこのコート借りたいんですけど」
「え?そんなこといきなり言われても困りますよ。もう夕方だしさっき試合が終わったところですから」
「そこをなんとかお願いします!!お金なら払いますから」
そう言って私は財布から諭吉を10枚取り出した。
「あのね、お金の問題じゃ……えっ?」
財布から出されたお金の枚数に男は驚いている。

