コートに着いてタクシーを降りると球の音と歓声が聞こえてくる。
「奏女先行ってるから」
「えっ!?」
奏女ちゃんは待ちきれずに私を置いて1人で中に入って行ってしまった。
奏女ちゃん、そんなに楽しみだったんだ……
私も中に入ると高校生たちがテニスの試合をしている最中だった。
「やっぱり高校生っていいなー」
そんなことを呟きながら歩いていると、何人もの女の子の中に奏女ちゃんがいた。
友達の中で楽しそうに笑う奏女ちゃんは、普通の女子高生だった。
やっぱり奏女ちゃんの居場所はあんな綺麗な病院じゃなくて、汚くても風が強くても…ここなんだろうな。
私はしばらくみんなを遠目に見ていた。
にしても暑いなー……
最強車移動ばっかりだったから日焼け止め塗ってないんだよね。
日陰で見てよっと。
奏女ちゃんはいつ試合に出るのかなー。
でもそんな思いとは反対にいくつもの試合が終わっていく中、奏女ちゃんは他の人とずっと応援しているだけだった。
なんで?
奏女ちゃん試合に出ないの?
邪魔するのも悪いと思って話しかけるか迷っていたら、ついに全ての試合が終わってしまった。
閉会式が終わって、奏女ちゃんは私のいる所に戻ってきた。
「なんで試合に出なかったの!?」
「…仕方ないじゃん。奏女はみんなと違って毎日きつい練習してたわけでもないしいきなり試合当日だけ来て試合に出してください、なんて言えないよ」
「でも…!!」
「別にいいの。みんなの試合見れて、久しぶりに仲間に戻れたんだから」
なんで…なんで……
今日テニスができなかったらもう二度とできないかもしれないんだよ!?

