気まぐれ社長の犬


響城Side



「あなた、遅れてごめんなさい」



パーティーも後半になったころ、母さんが遅れてやってきた。



「大丈夫だよ。でももうそろそろ終わりだね」


「あらそうなの?残念だわー」


「あれ?親父、妃和は?いないんだけど」



少し前まではいたはずなのに今はどこにもいない。



「え?本当だ。先に帰ったんじゃないか?」


「そっか」



でもあいつが先に帰るか?

ボディーガードのはずなのに。

まあ気分が悪かったのかもしれないしな……


俺はあまり気にすることもなく親父と母さんと車に乗って帰った。


自分の部屋に入ってネクタイを外し、机を見るとネクタイと拳銃が置いてあった。



「なんだこれ?」



ネクタイを手に取ると、下に1枚の紙があった。



“社長就任おめでとうございます
幸せな生活をありがとうございました。さようなら。妃和”



なんだよこれ……


俺は部屋を飛び出して妃和の部屋に入った。


中に妃和はいなくて、荷物もなくなってた。


くそ…なんだよこれ……
勝手にいなくなってんじゃねえよ

確かに今日で契約は終わった。
俺は婚約する気なんかねえ。

これでいい…そうだろ?


俺はゆっくり部屋に戻ってベッドに倒れこんだ。

なんでだよ…胸が苦しい。

意味わかんねえ……
これでいいはずだろ?

あーもうなんでこんなすっきりしないんだよ!!
風呂入ってこよう!!


でも風呂に入ってもまだすっきりしなくて、もやもやしたまま俺はベッドに入って目を閉じた。