「お母様、すごくいい人ですね」
「あ"?ただうるさいだけだろ」
「そんなことありませんよ。お父様もお母様もあんなにいい人で、響城さんはお幸せですね」
「義理だとしても今はお前の親でもあるだろ」
その言葉に、あたしは目を大きくした。
「…でも私がボディーガードとしていられるのは響城さんが社長就任までです。就任した後は、響さんが婚約を解消すれば私は風間家から出て行きます」
「…あの家に帰るのか?」
「そうなるでしょうね……きっと逃げてもすぐに捕まるでしょうし普通の仕事なら親に見つかってしまいますから私が捕まらずにできる仕事といえばキャバクラか風俗ぐらいですから」
「だから前出て行った時、あんな場所にいたのか」
「ええ。でも響城さんはこの婚約が嫌なのでしょう?なら社長就任後はお気になさらず解消してください。私はおとなしく家に帰りますから」
そう言って笑うと、響城さんは顔を背けた。
きっと優しいから何も言えないんだろう。
「着きました」
少しの沈黙の後、麻生さんの声であたしたちは車を降りた。
目の前には久しぶりに見る無駄に高価で大きな屋敷。
周りには私たちと同じようにパーティーに呼ばれた人たちが車から出てくる。
「疲れそうですね……」
「お前俺から離れんなよ。男が集まってくる」
「響城さんこそ私から離れたら女性に囲まれちゃいますよ?まあお互いがんばりましょうか」
あたしはなるべく響城さんにくっつくようにして中に入って行った。

