部屋に行くまでに色んな人の視線を感じた。
まあこんなにかっこいい次期社長と全然知らない女が歩いてるんだから見るのは当たり前か。
あたしが副社長室に入ろうとした時、隣の秘書室から女の人が出て来た。
「副社長あの…」
その女の人はあたしを見ると驚いた表情を見せた。
「何?」
「あっ副社長、この書類に目を通しておいていただけますか?」
「わかった」
「あ、あの…こちらの女性は?」
「ああこいつは…」
「私、今日から響城さんの秘書としてこちらで働かせていただく婚約者の花月妃和です」
あたしはそう言って笑顔を見せた
隣を見ると、婚約者と言われたのが嫌だったのか響城さんはちょっと面倒くさそうな顔をしていた。
「婚約者!?」
「はい。よろしくお願いします」
あたしは少し頭を下げた。
「では失礼します」
呆然とする秘書の女性を横目に響城さんと部屋に入った。
さっきの人…響城さんのこと狙ってるっぽいな。
「あの人誰ですか?」
「ああ、あいつは親父の秘書の相模佳乃(サガミヨシノ)」
「へーあの人、響城さんのこと好きみたいですよ?」
「だろうな。でも次期社長の肩書きだけだろ。毎日毎日欝陶しい」
「にしては爽やかな笑顔見せてたじゃないですか。今日はピアスも控えめだしスーツもきっちり着て、雰囲気が違いますね」
「会社ではこうしてんだよ。だからお前いらねえこと言うなよ」
「はーい」
あたしはてきとうに返事をしてソファーに座った。

