気まぐれ社長の犬


“…な…妃和…で…さ…”


何か聞こえる…この声は響城…さん?

あ…起きなきゃ…響城さん…響城さん…


視界にゆっくり光が差して、明るくなっていく。


真っ白な天井…ここ、は?

私が見たいものはこれじゃない…



「ひび…きさ…ん」


「妃和!?」



目を開けると、響城さんが慌てて近寄ってくる。



「妃和、大丈夫か!?お前ずっと寝てて…あっとりあえず医者呼ばなきゃな!」



あたふたする響城さんが可愛くて、つい笑が溢れる。



「そんなに慌てなくても大丈夫ですよ。私は平気です。響城さん…お医者さんを呼ぶの、少し待っていただけませんか?少しでいいので一緒にいたいんです」



ベッドについた手をぎゅっと握ると、響城さんはもう片方の手で私の頬を撫でた。



「俺だってずっとこうしたかった…お前3日も目が覚めなくて、すっげえ心配したんだぞ?このまま目覚めなかったらどうしようって…何度も医者に詰め寄って迷惑がられたよ」



悲しそうに笑う響城さん。

頬を撫でる手に私の手を重ね温もりを感じる。


ずっと触りたかった…感じたかった…

3日も経ったなんて全然感じないけど、今すごく響城さんが足りない。



「響城さん…」


「ずっとこうしたかった…お前の声聞いて、抱きしめて…笑う顔が見たかった」



私の体を気遣って抱きしめない響城さんを至近距離で見つめる。



「傷が癒えたら抱きしめてくださいね?」


「退院したら抱いてやるよ」


「あははっ望むところです」



2人で笑い合って、見つめ合う。

お互いゆっくり顔を近づけて軽く口付けた。



それから少ししてお医者さんが来て、10日後には退院だと言われた。


響城さんは、私が眠っている間毎日病院に来て話しかけてくれていたらしい。

仕事だってあるのに、早く終わらせて無理やり時間を作ってくれたんだと思う。

それをお医者さんから聞いた時、私は一層響城さんが愛しく感じた。