「着いたらタクシーに乗って第三倉庫までって伝えて。入口であんたのこと待ってるから」
電話が切れて、私はタクシーに乗って第三倉庫まで向かう。
初めて見る景色だ。
膝の上に置いた鞄を握り締める。
警察をまいてしまった以上、助けは期待できないかもしれない。
下手をすれば私まで人質として捕まってしまう。
何か策を考えなければ…
まあ、いざという時の為に拳銃は持ってきた。
太もものホルスターをスカートごしに触る。
大丈夫…きっと大丈夫。
「着きましたよー」
タクシーを降りると、入口で男が待っていた。
「お前が身代金の受け渡し人だな?」
頷くと倉庫の扉が開いて中に突き飛ばされた。
「おっとっと…」
「妃和さん!何であんたが!」
中を見回すと奥に縛られた麗美さんと一條がいた。
無傷の麗美さんとは反対に一條はぼろぼろで、意識がなかった。
たくさん暴れたんだろうな…手錠をつけられた手首がぼろぼろで、体中暴行された跡がある。
「一條…頑張ったね…」
2人に近寄ろうとすると、犯人の1人に止められた。
犯人は見た感じ全員で5人…私の拳銃は5発装填しているから、上手くいけば…倒せる。
「近寄る前にーお金、ちゃんと持ってきたんだよね?」
覆面だけど、分かる。
こいつが電話をしていた犯人。
そしてこいつらのリーダーだ…
「もちろん持ってきたわ」
「じゃあ身体検査ー。やれ」
そう命令すると近くで銃を構えていた男の1人が銃を下ろし私の体をチェックしていく。
盗聴器や武器なんかを持っていないか確認するためだろう。
だけど太もものホルスターには気づかなかったみたいで、男は離れていった。
「怪しい所はなし、と。にしてもあんた…ほんと綺麗だねー。ここまでの美人が来るとは思わなかったよ」
「ありがとうございます」
「笑った顔も可愛い。まあ、この状況で笑顔作れるあんたは尊敬するけど電話した時から肝の座ってそうな女だな、とは思ってたよ」
「どーも。それより、あの男だけでも解放できないかしら?もうぼろぼろで…死にそうじゃない」
「だーめ。あいつすぐ暴れるからさー取引きが全て終わったらお嬢様と一緒に解放するよ。ほら、お金渡して」
無言で鞄を渡すと、中身を確認する為にしゃがんでチャックを開けた。
その瞬間今しかない、そう思った。

