気まぐれ社長の犬


それから少しして、麗美さんのお父さんはお金を用意して電話をじっと待っていた。

2時間後、ぴったりに電話が鳴る。



「も、もしもし…」


「金は用意できたか」


「もちろんだ!む、娘は、娘は無事なのか!?声だけでも聞かせてくれ!」


「そうだなあ…少しだけ聞かせてやるよ」



そう言った後、機械的な音から悲鳴のような声に変わった。



「助けてお父様!!助けて!」


「麗美!すぐ、すぐ助けるからな!!ケガはないか!?」


「はい、終了ー」



無残にもほんの数秒で親子の会話は断ち切られてしまい、すぐに犯人の要求に入った。



「そこに女はいるか?」


「あ、ああ」


「じゃあそいつに金を持たせろ。できれば美人がいいなあ」



犯人のふざけた笑い声が耳障りで、私を苛つかせた。

ふざけるのも大概にして欲しい。

私が身代金の受け渡し人?

やってやろうじゃない。

私を選んだこと、後悔させてやるわ。