気まぐれ社長の犬


屋上の扉を開けると銃を構えた男が私の5m程先にいた。



「風間響城のボディガードともあろう人が、遅かったですね」


「女ってもんはね、男を待たせても許されるのよ」


「へえ…今日1日で6人ものスナイパーを使い物にならなくした人間がよくそんなこと言えるな」



男は馬鹿にしたように私を見下す。



「私の邪魔をする者は徹底的に排除する、それだけよ?」



私は笑顔で男に銃を向けた。



「でもあなたまで出てくるとは思わなかったなー麗美さんのボディーガードさん?」



「皆使えないやつばかりだったからな。事を早く終わらせる為に出てきたまでだ」



「へー…愛するお嬢様の為に?」


「…何をほざく。俺はお嬢様の犬だ。そんなことあるわけがないだろう」



淡々と話すその表情は全く動かない。
そして狙いを私の脳天に定めた。



「すごいわね。図星をついたはずなのに表情1つ変えないなんて」


「何度言えば分かる。俺はお嬢様のことは…



「じゃあどうしてあの時、社長室であんなに切なそうな表情してたの?」



私がそう言うと男はついに表情を崩し、私を見た。

どうして、と言うように。