気まぐれ社長の犬


「団長!」



叫び声が聞こえた方を見ると、隠れていたのか無傷の心ちゃんが立っていた。



「こ、こ…来るな…!ぐあっ」


「いや…っ団長!許さない…団長から離れなさいよ!!」



心ちゃんはナイフを持って涙を流しながら走ってくる。

子供とは思えない、怒りに満ちた本気の表情だった。



「来るなー!!」



団長の止める声も聞かず響城さんに向かって走ってくる心ちゃん。


私は響城さんの前に立つとそのナイフを蹴り上げ、心ちゃんを地に組敷いた。

そして落ちてくるナイフをキャッチし、心ちゃんの首に押し当てる。



「残念ね。大人をなめない方がいい。こんなナイフ1本であなたは私を殺せない」


「くっそ…!」


「あなた、人を殺そうとした事ないでしょ」



心ちゃんは驚いた顔で私を見る。

技術の未熟さもそうだけど、この子には経験だの覚悟だのが足りないように見えた。



「よかったわね。あなたはまだ戻れる」


「ふざけんな!あたしは仲間と団長と、一流の殺し屋に…!」



心ちゃんが言葉を言い終える前に、私は首もとに突きつけたナイフに力を込めた。