そのころの世界は銀が不足していた。

政府が発明した、聖也から言わせれば“なかなか”の機械に、それは必要不可欠なものだった。

銀の価格は考えられないほど高騰していたため、聖也はそれを有効に利用しようと考えた。



『過去から銀を盗む』




その計画は、世間に自分が発明したこの画期的な機械を公表するよりも、随分といい成果があげられるように思った。

この機会を発表すれば、それなりの金にはなるだろう。

だが、それだけだ。

世間はすぐに過去から銀を盗むことを考えるだろう。
そうなれば銀の価格は下落し、聖也への利益は損なわれてしまう。


そんな間違いを犯すほど、聖也は愚かではなかった。

なんといってもタイムマシーンを発明した男だ。




銀は慎重に、小出しにして政府に高く売ってやる。








一通り自らの知恵の深さにほくそ笑んでから、
聖也はどのように銀を盗むかを考えだした。










とりあえず、平安時代へ行ってみよう。

そこにはたくさんの銀があるはずだ。