「では、あなたはご自分の容姿についてどうお考えですか?」

彼は続ける。

「おそらく、たいへん申し上げにくいのですが、あまりいいとは言いがたいのではありませんか。
この平成の世では」


申し上げにくいなどと言うわりには、はっきりと断言する。

もちろんそれに異論はない。

彼の言うことは正しい。

残念だが、
どこまでも認めたくないが
それは誰もが知っている自明の事実である。


「しかし、平安の世でいう美人なのです、あなたは。

ええ、もうここまで申し上げたらもうお分かりでしょう。
私たちの言わんとしていることが。」


彼は自ら口に出す気はないようだ。

あくまで私に言わせたいらしい。


彼女と私を取り替えるということ。

単純だ。幼稚園児にだって分かる。


「私は平安時代に行く。

その女性は平成に生きる。」




「あなたはどうやら物分かりがよろしいようだ」


彼の微笑みがあった。

が、そこに老いはなかった。
どんな魔法をつかったのか。
それほどまでに彼の年齢に関する印象は変化を遂げた。


彼は本当はいくつなのだろう。

春子を見据える顔はあるときは30歳のようにも見え、一瞬目を離すと次の瞬間には60歳くらいのようにも見えた。

彼は一体何者だ。
どんな目的で、私たちを取り替えようというのか。

物分かりがよろしい私にはそれが分かるはずなのに、
一向に解決の糸口は見つかりそうもないのである。