その時、
『悪いけど、私の部屋まで運んで?』
と、バカみたいな事を言ってきた。
僕は、
『ダメ!第一、親が居るやろが!運んで貰え。』
と、断った。
すると、彼女は器用に左足を伸ばし、家のチャイムを押した。
中から彼女のお母さんが出てきて、
『どうしたん?』
と、ビックリした表情で聞いてきた。無理もない。1人娘が見た事もないガキにおんぶされているのだから。
Yは冷静に、
『私が溝にハマって怪我してもてん。そこに一緒の道場の私の彼氏がおんぶして家まで連れて来てくれてん。』と、説明した。
すると彼女のお母さんは、
『そうだったんですか!まぁ、立ち話もなんなんでどうぞ、入って?』
と、ドアを限界まで開けてそう言ってきた。僕は、
『いえ、荷物を道端に置いたままなので僕はここで失礼します。それからYさんの彼氏じゃなく、指導者です。』
と、きっちり誤解を解き、Yを降ろそうとした。
するとまた、
『部屋まで連れて行って?』
と、言ってきた。
それを聞いたお母さんも、
『この子、言い出すと聞かなくて…。連れて行ってもらえるかしら?』
と、頼んできた。
さすがに断れず、部屋まで案内された。