足音を最小限に抑えながら走るのは容易ではなかった。

走り始めて5分ぐらいが経った時、ようやく声の主を発見した。

その人は草むらで座り込んでいた。
そこは特に暗く、目が悪かった僕は女の人の異変には気付かず、
『そんな所に座って何しとんや?誰かが見たら頭おかしい子やと思われんで。ほら、早よ立ち!』
そう言って彼女の手を取り、立たせるとその子は僕の元彼女の友達で何回か会った事があり、何故か上半身裸だった。
僕はすぐ目をそらし、
『お前、変態やったんか。』
と、聞くと背後から、
『変態は俺らやっ!』
男の半笑いの声が聞こえ、振り向くとバットを振り回してきた。
後ろで女の子が悲鳴をあげて再び座り込む。
僕は間一髪でバットをかわし、男のお腹にパンチを打ち込んだ。
その瞬間、左右に一人づつ仲間がいて奴らもバットで殴りかかってきた。
それにはさすがに反応出来ず、背中と腰に激痛が走る。
痛みを堪えて倒れまいと必死で立っているとさっきパンチを打ち込んだ奴が、
『シバくぞっ!』
と、言いながら勢いよくバットを振ってきた。
一応、腕でガードしたのだが、力が入らず腕ごしに顔面を打たれた。