僕とI君が道場に着いた時には空が綺麗な夕焼けになっていた。
猪はいつの間にか死んでしまっていた。
僕達は帰り道に猪を捕まえた事を証明して逃してあげようと決めていたのに…。
そこに館長がやってきて、『あぁ~、やっぱり殺しやがったか。』
と、後悔している僕らの気持ちも知らずに刺々しい言葉を打ち込んできた。
僕らはうつむいたままで返す言葉がなかった。
そんな時、館長が耳を疑うような言葉を口にした。
『お前らが殺したんだからコイツ(猪)に感謝してたくさん食えよ』
そう言って、猪を道場内に運びさばき始めた。
僕らは見てられなくなり、2人で外に出た。
I君が『動物愛護団体が見たらなんていうやろな』
小さく呟いた。
『きっと館長がさばかれるんちゃうか』
そんな訳の分からん話が続いた。
それからいつしか館長の悪口に変わっていた。
『お前の所の館長、アホやな。』
I君が笑いながら言ってきた。
『時々、良い人やけど、アホや。』
僕も笑いながら言い返した。
『アホはお前らや!早よ、中入れ。』
と、いつから居たのか、後ろには館長が立っていた。
僕らは顔を合わせ、笑いながら急いで道場に向かった。
いつしか2人は仲良くなっていた。