!戦いで人は成長する!

女の子と二人きりで夜を明かすのはYと山で遭難した時以来だった。
僕らは寝付けず、無言のまま天井を見つめていた。
そんな中、突然Sが、
『さっき外で何してたんですか?』
と、聞いてきた。
僕は慌てて、
『えっ?…月と喋っててん。』
と、冗談をかました。
真面目なSは、
『起きてる?』
と、言いながらこっちを向いた。
起きてる事を確認させる為に目を合わし、
『寝てねぇよ。こんな状況で寝れるか!』
つい、本音をこぼした。
Sは顔を真っ赤にさせながら、
『冗談ばっかり言って!』
少し怒ったように言って仰向けになった。

それからまた、少し沈黙が続き、
『あのな、実は俺…道場を辞めようと思ってんねん。理由は自分の未熟さに愛想尽きてやな。』
真剣な表情で天井を見たまま自分の心境を伝えた。
Sは冷静に、
『教官がいなくなれば誰が教えるの?それに何を楽しみに練習しにきたらいいの?私は教官と喋ったりしながら帰るのが大好きなの。私にとって教官はお兄ちゃんみたいなモノなの。』
と、熱く語ってくれた。