あっという間に道場には僕とKとオオスズメバチのみになっていた。

僕らは闘志を燃やし、下駄箱から自分の靴を持って来てハチが何処かへ止まるのをジッと待った。

ほどよく時間だけが過ぎ、一向(いっこう)に止まる気配がない。

仕方なく、道場の裏手にある倉庫からバトミントンのラケットを持ち出し、適当にハチ目掛けて振り回してると、運よく叩き落とす事に成功した。

2人は顔を合わせ、
『ワァ~!』
と、息ピッタリで外に出た。

みんなは僕らを見て、
『ハチは?』
と、聞くと、冗談が大好きな僕が、
『もう一匹増えたぁぁ!』
と、口を大きく開け、目を手で隠した。

指の隙間からKを見ると、必死で笑いを堪えている。

焦っているみんなを見て、僕が提案した。
『道場使えないし、汗だくやから川行って水中トレーニングや!』
「きっとバカにされるやろな~」と、思っていると、珍しくみんながのってきた。

川と言ったら暴走族とやり合った所がナイススポットなのだが、そこに連れて行くとRに怒られる気がしたので、そのもっと下流の一番深い所が3メートルぐらいもある穴場に連れて行く事にした。