『ガルゥゥゥ…』

近寄ると狼は
力のない声で低く唸る。

「大丈夫…怖くないよ。
傷を、治してあげるから。」

ねっと微笑み、狼が落ち着くのを待った。
唸って威嚇してきたが
力尽き、その場に倒れこんだ。

オレは急いで傷の状態を見る。
どれも深い傷ばかりで
命に関わるかも知れたい。
応急措置じゃ…
間に合わないだろう。

「酷い…誰がこんな事を…」

しょうがないか。
オレは小さく息を吸うと
呪文を唱える。



「……………」



左腕の印が光輝く。



「…っつ…………」



術を使うと同時に
強烈な痛みが体を襲う。
食い縛って耐えながら
傷に術をかけ治していく。


回復呪文



正直、得意じゃないが
やれるだけの事をした。












ーーーバタンーーー











何とか手当てをして
もう大丈夫だと確認すると
力が抜けて、そのまま倒れた。













蒼い月が見えた気がした。