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「本当に…行くのですか?」





夜の丘に
男のやさしい声が響く。

蒼髪なびく男の表情は悲しげで、
心配そうに女の返事を待つ。

「ごめん…
皆の気持ちは嬉しいよ。
でも、いつまでも
甘えてられないし……
やっぱ…忘れられない。
ううん、受け入れ…られない…」

俯いていた女は顔をあげ
精一杯の笑顔を向けるも、
今にも泣き出しそうだった。

「これから…
どうなさるおつもりですか?」

「世界を…見て回るよ。
あの人が残してくれた世界が…
どうなっていくか…」

「私の側には
居られないのですね?」

男は悪戯笑みで聞く。
女は戸惑い。

「ちっ…違うよ。そうじゃないっ」

女は、言い終わる前に
腕を強く引かれ
気がつけば、男の腕の中。
「わかっていますよ。
少し悪戯が過ぎました。」
男はクスクス笑うと
女の額に口付けをする。

女の顔が赤くなると更に微笑み。

「二つ…二つ約束を。」

ふと、真剣な表情で
女を見つめる。

「するから…行かせてくれる?」

火照る頬を押さえながら聞くと、
男は黙って頷いた。