恐ろしい顔をした村井さんがゆっくり近づいてきて、男も怖かったのか、口をふさぐ手の力が緩んだ。
そのすきにあたしは、男の手を噛んだ。
「いって!!」
あたしと男が少しはなれたすきに、村井さんはあたしの鞄を拾って、手を引き、走り出した。
走りながら、村井さんは、自分が羽織っていた上着を脱ぎあたしに渡した。
村井さんの車に乗り込み、二人ともしばらく黙っていて、あたしは震えていた・・・。
村井さんは目を合わせようともしない。
「村井さん・・・?ありがとうございます・・・」
あたしは消え入りそうな声で言った。
