「水月!」
鬼頭はぱぁっと顔色を変えると、俺を押しのけてたったと走っていった。
ぶっ!
俺は押しのけられて、壁に顔面ダイブ。
っあっのガキ!
前言撤回!やっぱ可愛くねぇ!!
開け放たれたリビングの扉から玄関の様子が見えた。
げっそりした様子の水月が玄関口に足を踏み入れるなり、廊下に倒れこむ。
「雅……たすけ……」
て、という言葉を言い切る前に、水月の上にのしっとボストンバッグが乗かっかった。
「何よ、男のくせにだらしがないわねぇ」
5年ぶりに聞くその声は、俺の知ってる声で、話し方もトーンも何も変わっちゃいなかった―――



