「何だってんだよ!!」
誠人は何も分かってない!
千夏の言葉を思い出し、俺は八つ当たりで車のボディーを思い切り蹴り上げた。
ガン!と派手な金属音が静かな駐車場に響き渡る。
「……何だってんだよ……」
――――
千夏と出会ったのは、ちょうど一年前だった。
無理やり連れて行かれた合コンで、だ。
誘ってきた連れは大学時代の友人で、相手も同じ大学の後輩だと言う。
「頼むよ林!お前がいると女の子の集まりがいいんだよ!な、この通り」
最初は渋ってたがしつこく拝み倒されたら、しょうがない。
でも俺は彼女がいなかったけど、恋人を作る気もなかったので、メンバーを良く見ていないどころか自己紹介すら真面目に聞いていなかった。
利益がない人間に笑顔を振りまくほど俺はできていない。
ゲームやらで場が盛り上がる一方、俺は隅で自分のペースで酒を飲んでいた。
安っぽい居酒屋だ。酒もうまくねぇ。
「すっごい、つまんなそーって顔してる」
ふと俺の目の前に人影が落ちたと思ったら、少し地味で大人しめの女が前の席に座った。
それが千夏だった。



