「何が……?」


千夏は俺の目をまっすぐ見据えてくる。曇りのない澄んだ瞳で。


とぼけてるわけではない、と思った。


俺が何に対して謝ってるのか聞いているのだ。




従業員出入り口につけられたお粗末な外灯がぼんやりと灯りを灯していて、


千夏の影が俺の足元まで伸びていた。


俺はその影から一歩後退した。




まるで逃げるように。





「俺が…あいつからのエアメールを隠してたことだろ?」




俺は素直に白状した。


でも別に隠してたつもりはない。


俺を捨てていってから5年間連絡ひとつ寄越さねぇで、ある日突然エアメールだけを送りつけてくる女の手紙なんて見たくもなかったから、目の届かないところに隠しておいただけだ。


でも何故だかその手紙を捨てることはできなかったのは事実だ。





「そんなことじゃない」


千夏はこっちが拍子抜けするほどの弱々しい声で答えた。


語尾が震えている。



一瞬……泣いてるのかと思った。