部屋の明りを暗くする気配がして、ギシっと小さなスプリングが軋む音が聞こえた。


布団から顔を覗かせると、千夏が俺の隣に入ってくるところだった。


「あ、ごめん。起こしちゃった?」


千夏が小さく謝る。


「いや。寝てねぇし」


「そ。早く寝ないと、また明日辛いわよ」


そう言って布団をめくる。


フワリと千夏の髪からシャンプーの香りが漂ってきた。


フルーツのような、花のようなみずみずしい香りだった。


初めて嗅ぐ香りに、いつか千夏の香りを身近で感じる男が俺じゃないことを物語っている。


俺じゃない誰か……


それが誰かなんて興味がない。俺じゃないと意味がないんだ。


彼女の隣に居るのは―――






この先永遠に俺がいい。





俺は千夏の隣にずっと居たい。







俺は半身を起こした。


千夏が不思議そうに首を傾けていたが、俺は彼女の体をやや強引と思われる力でぎゅっと抱きしめた。


こうやって抱きしめたのはいつぶりだろうか。


壊れそうに華奢だけど、柔らかくて―――安心する。



体温。香り。



何もかも他の男なんかに渡したくない。






「行くなよ。その男のとこに行くな。




俺の元に戻ってきてくれ」