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「次の方、どうぞ」


俺の声に、おずおずと女が顔を出した。


お、美人♪


役得だね~、医者ってのは。


ここのナースも美人揃いだし。


「あの……いつもの先生は…」


女は俺の向かい側に用意された丸椅子に腰掛けながらも少し不安顔。


歳は千夏と同じぐらいかな?上品なOLって感じだ。


「父は往診です。留守の間私が診察をいたします」


営業用のにっこりスマイルを浮かべると、女は急に安心したように打ち解けた。


まあ無理もない。いつもと同じ場所にいつもの医師がおらず、変わりに見慣れない若造が座っているからな。


そういう意味で白衣は絶大な信頼感がある。



「昨日から寒気がして、頭痛もするんです」


「なるほど、食欲はどうですか?」


俺は用意されたカルテにドイツ語で、容態を書きつけた。


ここのカルテは全部ドイツ語だ。何でそんなくそめんどくさいことを、って思うが、昔からの決まりらしい。


「食欲も…あまりありません」


「ちょっと失礼」


俺は患者の喉元に触れた。温かな体温を感じる。


「扁桃腺は腫れてないようですね。最後の生理はいつです?」


「2週間前…」


女が恥ずかしそうに俯く。


う~ん。職業柄とは言えそんな反応されると、こっちも気まずい。


「じゃ、ちょっと診察してみましょう」