『………先生?あたし―――』


鬼頭と話すのは、あいつが車から飛び出していったきりだ。


恋愛のうんちくを知り尽くした振りして、あいつに説教じみたことしたっけな…


今となっては、何だかそれが妙に恥ずかしい。


「………分かってるって。どうした?」


『…うん。この前は―――ごめんね……あたし苛々してた』


「別に、気にしてねぇって。それだけ?」


喉が…干上がって、声が……渇く。


感情のない言葉だけが、空に吸い込まれていくようだ。


『…………うん』


鬼頭は短く答えた。


「そんなこと言う為にわざわざ掛けて来たのかよ。律儀なヤツ」


俺はちょっと笑った。


何でだろう……


哀しいはずなのに、俺は今笑ってる。


何で?


楽しくもないのに。



何で―――





「ちょうどいいや。お前に報告。




俺、千夏とたった今終わった。




俺、振られたんだ」






何で鬼頭にこんなこと言ったんだろう―――