テーブルに置かれたクールのタバコのパッケージを見て、僅かに千夏が目を開く。


俺はすでにタバコを口に挟んでいたわけだが、千夏はそんな俺を初めて真正面から見た。





「誠人……タバコ……変えたんだ……」




「え?……うん」


タバコを変えたのが何かまずかったか?


千夏は元々から俺がタバコを吸うことに渋面を見せていたが、最近ではあまり口うるさく言わなくなったから、とうとう諦めたかと思ったのに。




千夏は僅かに眉を寄せると、ほんの少し目を細めた。





「男の人がタバコを変えるのって何かあるって聞いたわ。


誠人、香水もつけなくなったし。


短い間に変わったわね」





千夏はさりげなく俺の好きなものを覚えていてくれる。


それは嬉しいことだったけど―――


でも俺は今ほど彼女の記憶力が鈍っていてくれることを願ったことはない。




「別に……なんでもねぇよ」


俺は千夏から視線を外して、タバコに火をつけた。


「嘘……」


弱々しい千夏の声が聞こえ、俺は顔を戻した。


千夏は顔を俯け、今にも泣き出しそうに目頭を押さえていた。