この病院の近くに大きなビルが建っていてその地下に居酒屋がある。
一度千夏と入ったことのある居酒屋だ。
俺も千夏も好きな日本酒がたくさん取り揃えてある。
そこに決め、店に向かう最中、俺は世間話で彼女の気を紛らわせた。
浮かない顔をしていた千夏だが、時折質問を交えながら、俺の話に何とか相槌を打ってくれる。
店に入って奥の座敷へと通された。
掘りごたつのある座敷だ。
小さな小部屋のようになっていて、テーブルが2組置いてある。
片っぽのテーブルにはすでに客が入っており、スーツ姿の若い男2人組が酒を飲んでいた。
案内されたテーブルに腰を落ち着かせようとしていると、
「あれ?植村さん?」
とその若い男たちが揃って顔をあげた。
「あ。お疲れ様です」
千夏がちょっと驚いたように目をみはり、ぺこりと頭を下げる。
「お疲れさま~♪偶然だね。こんなところで会うのって。えっと……」
2人組の一人が俺を見てちょっとだけ眉をしかめた。
俺は無言でちょっとだけ頭を下げる。
頭を下げる義理もないが、あからさまに敵視の色が混ざっているのが見て取れたので、牽制の意味でも、だ。
「植村さんの彼氏~?」
2人組のもう一人が聞いてきた。
「………え……ええ」
とだいぶ詰まってはいるが、何とか肯定してくれたことにほっと胸を撫で下ろす。
「へぇ」
男は値踏みするように俺へちらちらと視線を寄越してきた。
んだよ。見てんじゃねぇよ。
ジロリと見返すと、慌てて視線を逸らす。
こいつ……
明らかに千夏に気あるな。



