「好きってのはちょっと大げさかな?まぁ気を許してるってこと」
クスクスと楠が笑う。
「乃亜、その冗談マジでやめて」
鬼頭が迷惑そうに楠を睨んでいる。
俺だってマジで勘弁だ。
でも、冗談が言えるまで楠は上昇したってことだな。
一人納得して、俺はアイスコーヒーを飲んだ。
それから30分程喋って、俺は楠を家に送り届けた。
車を降りた楠が助手席側に回り込み、鬼頭に手を振っている。
「じゃぁね、雅。また連絡する~」
「うん。またね」
そして楠は家に入っていくかと思いきや、こいつは俺の方へ回ってきた。
何だろう…
何か言いたいことがあるのかと思って、俺はパワーウィンドゥを下げた。
「先生。色々ありがとね。
やっぱ先生は優しいよ」
そう言ってにっこり微笑むと、楠はちょっと屈んで俺の顔に顔を近づけてきた。
花の香り……
楠が愛用している香水だろうか。
それに女の子特有の甘ったるい香りが混じって、不思議と大人の女の香りを思い出させた。
「ありがと」
もう一度囁いて、楠は俺の頬にチュっと口付けを落とした。



