歌南が俺の元を去って、2ヶ月ほど俺はストレスで体調を崩した。
あの頃親身になって世話をしてくれたのが水月だった。
あいつが責任感じることなんてないのに、あいつは自分のせいだと言わんばかりに過保護すぎるぐらい、俺の周りをうろちょろしてたっけ。
何でも背負い込むからなぁ、水月は。
そこが姉の歌南とは180°違うところだ。
歌南は……
無責任で、勝手で、奔放な女だ。
それでも昔はそんな女に心底惚れてた―――
「先生」
シャワーを浴び終えて、腰にタオルを巻いただけの格好でバスルームから出ると、鬼頭がヌっと、
灯りを落として暗くしたリビングから出てきた。
「おまっ!!まだいたのか!!」
俺は思わず飛びのきそうになった。
鬼頭の白い顔がまるで幽霊のように見えたから。なんて言えやしないけど。
だってもう夜も11時だぜ。
てっきり帰ったかと思ったけど。
「あたしもシャワー借りる」
鬼頭はきっちり畳んだ着替えを手に、俺の横をすぅっと通り抜けた。
足音もしねぇ。
ホントに幽霊みたいなやつ。
……て、おいおいおいおい!



