鬼頭は俯いたまま、制服のスカートをじっと見つめている。
そこに何があるというわけでもないのに。
じっと……
「……もし妊娠してたら…あたし迷わず産んでたと思う」
鬼頭の言葉に俺は思わず、
「はぁ!?」と素っ頓狂な声をあげてしまった。
「何言ってんだよ。お前高校生だろ?
学校を辞めなきゃいけないし、現実問題子供をどうやって育てていくっていんだよ。
お前みたいな高校生が子供を育てられるほど現実は甘くねぇよ」
「分かってるよ」
鬼頭は少し声を尖らせて言った。
俺は前髪をくしゃりとかき上げると、苛立ったように声を強めた。
「第一水月はどうなる?
お前一人の問題じゃねんだぞ。あいつは責任をとって学校を辞めて、お前と結婚する道を選ぶ。
お前は好きな男にそうさせるのか?」
俺の言葉に鬼頭は初めて顔を上げた。
一瞬今にも泣き出しそうに顔を歪めていた……
だけど、本当に一瞬でまばたきをした次の瞬間はいつもの無表情だった。
「そんなこと望んでないよ。
ただ、女としての幸せを……母になる喜びを、ちょっと味わいたかっただけ」
軽薄だったね。
と、鬼頭は言って口を噤んだ。



