まだ心臓の奥が不規則なリズムで波打ってる。


緊張がしっかりと抜けていないんだな。


思えばこんなに緊張をしたのは医師国家試験の結果を待った時以来だ。


診察券や保健証を受け取り、診察代金を支払い終わった鬼頭と、病院を出るとき二人とも無言だった。


車を停めた専用駐車場まで200メートル程離れている。


「帰るか……」


「……うん」


夕暮れ色に染まったアスファルトに二人の影がずっと遠くまで伸びていた。


二つの影はしっかりと寄り添い、まるで仲の良い夫婦のそれに見えた。


水月だったら……


きっと手を繋いで帰るだろうな。


鬼頭の流れていった不安や緊張を……それでも全部流れきっていないかすかに引きずったものを全部受け止めるように。


しっかりと指を絡めて。


あいつはそういう男だ。


そういう優しい―――男だ。






「鬼頭……」


俺の後ろを歩いている鬼頭を俺はちょっと振り返った。


下を向いてた鬼頭が顔を上げる。


「……手でも繋ぐか?」