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「おはようございますっ。」
「あ、相原さんこんにちはー。何?間違えて来たんですか?」

「はい、間違えて来ちゃいました…。」
「しょうがないなぁ…じゃあせっかくだし自習で昨日の続きでもするか。」

午前10時。塾に行くと案の定、中川先生は一人で事務所番をしていた。
近くに誰かがいるわけでもないのに、台本に書いてある事を棒読みしたような会話。
私と中川先生はふと周りを、少し見渡した後笑った。


初めはちゃんと勉強してたんだけど、そのうちなんでもない話になって…。

「で、皆もう15歳なのに私、誕生日3月28日だからまだ14歳なんですよ。」
「えっ、遅いなぁ…。あ、ちなみに俺4月24日な。はい、聞いたしプレゼントよろしく!」

にって笑ってみせた先生。

「えーっ。てか中川先生って何歳なんですか?」
「俺?んと14歳。いや相原さんより1つ上の15歳だったり…。」

へぇー、はいはい。そうですか。
いやいや、普通におかしいじゃん!!

「講師って15歳からできるんだー。すごいですねっ!しかも中川先生煙草吸ってるし…。まだ未成年なのになぁ。」

ちょっとわざとらしく言ってみた。

「そうだなぁ…。ま、僕天才なんです。魔法使いですよ。…てかそろそろ塾閉める時間だけど?」

よく見ると外は真っ暗。
冬の19時はやっぱりかなり暗くなる。

「えぇっ。今日沢山先生いないから早く帰らなきゃ行けなかったのに…。うー…。」

少し泣きそうになってると、先生は外を見て、時計を見て言った。

「あ、ちょっと待ってな。」

??どうしたんだろ先生…。

「ん、行くよ?」
「え、先生どこに?もう帰るんじゃあ…。」
「君のお家に決まってんでしょ。今日、俺送るし。沢山先生に頼まれてたから。」

もともとの性格だけじゃなく、不審者の事もあって余計に人を信用してなかった私。
でももうこの時すでに、私は中川先生を信用してた…。
頼ってた。
中川先生は何か違ったの。
信じられたの。
どうしてなのかは今もわからないままだけど…。

「あっ!先生あれ。星…すごく綺麗じゃないですか?」