「あ…それは…。」
「…ん?」
「え、や、そうなんですか!?時間間違えてきちゃいましたよ。」

わけのわからない嘘…。
本当は西野とお互い話があるからって話す約束してるから。
沢山先生に頼んで教室を借りる。


「よぉ、あの…呼び出したりしてごめん。」

1人ぽつんと待っていると西野が来た。
とても挙動不審だ。
…。静かな教室。
沈黙がしばらく続いた後、西野が口を開いた。

「メールとか、しつこくしてごめん。」
「ううん、もういいの。受験…ちゃんと終わったし。」
「それと…。」

少し西野はためらって、私をみて、床をみて、また私をみて…言った。

「俺が相原を好きって噂…誰が流したか知らないけど、あれ、嘘だから。」

ただうなずいた。
喉まできた言葉を飲み込んだ。
"避けたりして嫌な思いさせてごめんね。"…ごくんって。
西野が去った後の教室で、ただ1人私は泣いてしまった。
私は西野を…そして周りを傷つけただけだったね。
どんな形であれ、自分の事を想ってくれた人を。
だけどこうなる事を望んだのは西野なんだ。
私が覆してとやかくいう事じゃない。
でも…無力で人を傷つけたり、巻き込んだりしかできない自分に腹がたった。


<ガララ>
「相原…ここに居たのか。探したぞ。」

沢山先生だ。

「西野1人おりてきて、お前来ないから心配したんだぞ。大丈夫か?」
「私は…大丈夫。でも、でも私は西野を…傷っ…。っ…ひっく…。」

沢山先生は、私が落ち着くまでずっと側にいてくれた。
ぽんぽんって肩をたたいて優しく笑ってくれた。