「中谷…。相原…。」

沢山先生が来た。
きっと中川先生が言ったんだろう。

「中谷は帰れ。相原は俺が見てるから。」
「あたしも美佳の側にいる!」

京香は強く言い張ったが、沢山先生に反対されて…せめてと、コートを貸して行ってくれた。


「先生…私もう大丈夫。大丈夫だから帰ります。」

階段を下りようとした私の前に、沢山先生は立ち塞がる。

「駄目だ。…普段泣かないお前が泣くなんておかしい。…何があった?」
「…。西野がー…。」

「ったくもう、何で俺があいつの色恋沙汰に関わんなきゃなんねーんだよ。まぁ…俺から釘さしとく。」

"行くぞ"と階段を下り始める。
そして私も後に続く。

「はい。」

すると沢山先生は立ち止まり、振り返り言った。

「…でも、あいつの気持ちも少しは分かってやってくれよな。じゃ、遅いしそろそろ帰るぞ。送ってく。」

先生…。京香…。
ごめんなさい。ありがとう。


「あー、相原さん。」

沢山先生に送ってもらう帰り、タコ焼きを買いにでていたらしい中川先生に会った。

「あっ!中川先生。明日日曜日だけど…塾来てくれますか。」

先生に会いたい。

「え、俺休日出勤すんの!?…まぁちょっとだけならいいよ。」


あれから私が塾を卒業するまで、何回か休日出勤させちゃったよね。
だけどお願いするだびに先生は、必ず来てくれて…でもそれは私からのお願いだからじゃなく、先生の生徒に対する優しさだって思ってた。

私の個人的なとこには関わって、力になってあげる事が出来ないから。
だからせめてって…"生徒だから"じゃなくて"私だから"来てくれてたんだよね。

今更かもしれないけれど、心からありがとうって思っています。