桃花ありがとう。
きっと桃花がいなかったら私は自分の中で、この気持ちを消してた。
桃花はいつも言ってくれたよね…覚えてる?
私が"先生"を気にしてどうするんだって叱ってくれたよね。
気にしなきゃいけない事かもしれないけど…。
私が憧れたのは"中川先生"かもしれないけど、好きになったのは"中川絢哉"でしょって。
そうだね。
そうだったよね…。

なんだかんだで時は流れ…。

**

<ピーンポーン>

宅配便の人が来た。
届いたのは大きな封筒。
この中に、こないだ受けた私立入試の合否通知が入っている。
怖くて開けられなくて、とりあえず塾に向かって歩きだす。
でも待ちきれない私は、途中封筒の中をみた。

「受かってますように…。」

それらしき紙をひっぱりだしながら、ギュッと目をつぶる。


「…!?嘘…合格…通知だ…。」

にやけがとまらなくって、ただ嬉しくって、何度も合格通知を見直した。
当初は受ける事さえ難しいと言われていた高校だった。
その高校に、ここ数ヶ月の努力で…合格する事ができた。
はやく中川先生に報告したくて、ダッシュで塾へ。

"おめでとう""頑張ったね"何度もそう言ってくれた。
合格した事も嬉しかったけど、中川先生にこうして報告できた事も嬉しかった。
もちろん他の先生からの"拍手"や"おめでとう"も沢山もらった。

だけど私は合格した事にうかれて、大切な事に気づかないでいたんだ。
ある日、京香の様子がおかしかった。
京香はしんどそうに塾の、授業が全て終わってもう誰もいない2階の廊下へ。

「京香?」